完全犯罪と女たち
34歳詐欺女が捕まったと思ったら、次は鳥取で周りの男性が次々と不審死を遂げたという35歳女が現れた。同種の事故は連鎖すると言われるが、同種の犯罪も連鎖するような気がするのは気のせいか。

どちらの事件でも睡眠導入剤というのがキーワードになっている。前者の女の場合、今回車の中で発見されたO氏を除けば、男性らの死因は事故死(自殺?)で処理されており、O氏の死がなければそのままこの事件は表に出ないままだったかもしれない。

不思議なのは女の行動だ。次々と男性たちを騙すテクニックを持ち、ブログの文章を読む限り、結構高い知的水準を持つ女性だと思われる。それなのに、女が真犯人だと仮定すると、車の中にキーがない、練炭にO氏の指紋がないetc,etc、あまりにも偽装工作がおざなりすぎる。行き当たりばったりすぎて、推理小説好きの私としては、なぜだ!と頭をひねることばかりである。

ドラマ「古畑任三郎」では、完全な策を弄したはずの犯人の手から水が漏れる。十津川警部(西村京太郎トラベルミステリーシリーズ)は、あの面倒くさい時刻表を読み解き、犯人のアリバイを破る。しかし、現実社会では勧善懲悪とはいかず、闇に葬られた完全犯罪が本物の犯罪の数倍存在するのであろうか。死体が発見されないために事件化されず単なる失踪と扱われている殺人事件はかなりあるという話を聞いたことがある。「失踪」自体、この日本ではかなり多いのだ。

ちなみにWikipedia曰く、
完全犯罪という語は、一般的に以下に挙げる条件の、一部または全てを満たす場合に使用される。

犯行が露見しない
被害者が見つからない
加害者が判明しない
証拠が見つからない
トリック(犯行の手法)が見破られない
法的に裁かれない(法の目をすり抜ける…など)
加害者が捕まらない(時効まで逃げ切る、捜査範囲外に逃亡する、天寿をまっとうする…など)


モラルの問題やらストーリーの問題やら何やらで、完全犯罪よりも犯罪が露見し犯人が捕まる小説の方がずっと多いことは言うまでもない。だが、数は少ないながら完全犯罪を扱った名作もある。その中の最高傑作の1つだと個人的に思っているのがコレ。

カトリーヌ・アルレー著「わらの女」
翻訳の仕事をする知的で打算的なドイツ人女性ヒルデガルデ、34歳独身。彼女が見つけた新聞の求縁広告は“莫大ナ資産アリ。ナルベクはんぶるく出身ノ未婚ノ方、家族係累ナク…”というものだった。こうしてすべてが始まった。そして彼女は億万長者の妻の座に。しかしそこには思いも寄らぬ罠が待ち受けていた。



34歳の翻訳者・・・もしかしたらこれを読んでいるあなた?(笑) 1956年に書かれた作品だが、現代でもその内容は全く色褪せない。元女優カトリーヌ・アルレー自体、詳細な経歴は明らかにされておらずミステリアスな存在である。こんなゾクゾクする犯罪者を小説で読めば、かの34歳女の犯罪など実に単純だと思えてしまうのだ。

ウィリアム・アイリッシュ著「幻の女」とともに、古典ミステリの名作中の名作「女」シリーズ。未読の方はこれを機に(?)是非どうぞ。

【2009/11/06 11:57 】 | 本棚 | コメント(2) | トラックバック(0) |
冬の風物詩と姪っ子と
11月に入っていきなり風が冷たくなった。滋賀や長野の山では雪が降っている。ニュース映像では、銀座でショッピングしている男性が「今日着ようと思って」とダウンジャケットを購入していた。私もダウンジャケットとはいかないまでも、今年初めてダウンベストをおろした。暑いのは超苦手だけれども寒いのもやっぱり辛い。毎年冬になって「あ、寒いってこういうことだったんだ」と新鮮に驚く。人間の脳なんて数四半期も経てばもう冬の寒さを忘れてしまうんだな(私だけ?)。

この季節になると、周りに必ず受験生を持つ母親、父親が出てきて、ちょっとした緊張感が伝わってくる。中学/高校/大学受験を目の前にした受験生を持つ友人も多い。早々と推薦が決まってのんびりしている友もいれば、推薦枠を取れずに肩を落とす友人も、ラストスパートに必死になっている友人もいる。もちろん主人公は友人ではないけれど。ただ、自分の努力では何ともしがたく、しかし、自分のことのように、いやそれ以上に子供の行く末は気になるもののようだ。

ある友人は、息子の推薦が駄目になったと分かった後、道をぼうっと歩いていて何度も車に轢かれそうになったという。
「何だか自分のせいなような気がして・・・」
そんなバカなと思うけれど、少し理解できるような気もする。
「飲みに行くのは当分やめておくわ」
という人もいる。自分は夜食作るくらいしかすることないんだから、遊びに行ってもいいんじゃない?と思っても、やっぱり気になるんだろう。もちろん、子供は子供と変わらずにアクティブに遊びまわっている母親もいる。どっちがいいなんて私には解りっこない。

姉の子供の姪っ子3人も、ついに末っ子Mちゃんが大学受験を迎える年になった。これで受験も仕納めだと姉も張り切っている。ところが事態はそう簡単ではない。Mちゃんは芸大を目指しており相当道は険しい。今年はもう捨てて(!)浪人覚悟だという。私はその辺よく分からないのだけれど、芸大・美大を目指すにもいい予備校と先生が必要らしく、それは東京にしかないらしい。もちろん今も先生にはついているが、やっぱり東京の先生につきたいようだ。目指しているのも東京の芸大である(言うまでもなく、地方で独学で受験を突破できる優秀で才能あふれる学生もいると思う)。

姉はいいマンション(アパート)は抑えられてしまうからと今年中に住居探しに東京に行くという。ついでに私も行かないかと誘われた。やっと東京だ!と喜んだものの、ノワたんが来たばかりでお留守番は可哀想か・・・と今悩み中。ちなみにだんなさんは今東京出張中。

この不況を背に、奨学金はすごい倍率らしい。友人も去年かなりの奨学金をあたってみたが全部はねられたという。女の子の東京独り暮らし、どれだけお金がかかるだろう。学費も(落ちれば予備校費!)芸大ならそこそこかかりそう。贅沢すぎやしないかとさりげに姉をいさめてみたけれど、最後の子だし、何とかその夢をかなえてあげたいのだそうだ。おばあちゃん(My Mother)の財布が底を尽きれば、次は私が援助せざるを得ないかも(笑)。

○○家の金融危機だよ!でも、女の子でも大きな夢を抱いて、それを実現させてほしい気持ちもある。若いっていいなぁ、夢があるっていいなぁと純粋にそう思う。既に人生の半分を過ごした自分には、ちょっとまぶしく、だが、近くから遠くからできることがあれば応援してあげよう。


【2009/11/04 11:54 】 | 家族 | コメント(0) | トラックバック(0) |
「沈まぬ太陽」−−JALの未来と御巣鷹山と
「不毛地帯」のドラマ化を組んでかケーブルでも山崎豊子シリーズを組んでいる。私は山崎豊子の最高傑作は「華麗なる一族」や「不毛地帯」を抜いて「女系家族」だと思っている。なんせ出が女系家族だから(笑)。同じく船場を題材にした「花のれん」や「女の勲章」なども読みごたえがある。そう言えば「白い巨塔」も阪大医学部、「華麗なる一族」も神戸銀行(=今の三井住友)をモデルにしており、いずれも大阪の風土が透けていて面白い。

   


この数日間、映画を観る前に(映画は観たいけれど長すぎてトイレが不安)、おさらいしておこうと「沈まぬ太陽」を再読している。「見てから読むか、読んでから見るか」ならば私は断然「読んでから見る」派だ。推理小説でもない限りネタばれはあんまり気にしない。自分の好きだった小説がどんなふうに映像化されたのかを比較するのが楽しい。まさにイメージ通りだわ!と感心するのもいいし(「風と共に去りぬ」etc)、ちょっと違った世界観が漂うのもいい(「ジョゼと虎と魚たち」etc)。おしなべて、小説を映画に圧縮するのは難しく、どちらも大好きとはいかないのだが。

「沈まぬ太陽」の映画版はまだ観ていないが、文庫本ならば5巻に及ぶあの長大作を3時間超にまとめきれるのかは疑問だ。どの辺りをメインに描いているのだろう。小説で言うとこの作品の圧巻は「御巣鷹山編」にあると思う。若かりし頃に読んだときはさほど感動した覚えがないが、今になって御巣鷹山のくだりを読むと涙がボロボロと流れる。大事な人を失う悲しみというものがひしひしと伝わってくる。自分も年を取ったってことだ。

偶然か必然か、今はJAL再建の話題がTVを賑わせている。JR脱線事故等、大事故の裏には一体何が隠されているのか、企業体質や労働組合や様々な社会問題が赤裸々にされていく。山崎豊子という人の取材力はやっぱり半端ない。

彼女の作品は読むのが少々辛くなることが多い。「不毛地帯」ならシベリアの極寒で、「沈まぬ太陽」なら僻地アフリカで生き抜く主人公の姿にこっちまで苦しくなってくる。「白い巨塔」も「華麗なる一族」もすかっとしたラストとは到底言えない。現実社会とはそんなものだと思えども、ハリウッド映画のようなスカッとする浄化作用は得られない(その点、「女系家族」はイイね)。ひたすら重いのだ。でも、ときにはあえてこういう本を読んでみるのも大事かと思う。


来週にはついにノワたんが我が家にやってくる。こんな風にのんびり秋の夜長の読書などとは言ってられないかも。早く「不毛地帯」を読み切ってしまおう。


【2009/11/02 09:52 】 | 本棚 | コメント(4) | トラックバック(0) |
三大欲望の果て
やっぱりブログを書いている以上はこの話題は外せまい。

「ブログ」、「婚活」、「介護」、「インターネット」、「ヤフオク」−−ここまでいわば旬のキーワードが含まれる事件ってかえってドラマ臭い。まるで桐野夏生の小説だ。でも関係者のうち死亡者が4人、6人・・・それ以外にも被害者が数名。自分ではだまされたと打ち明けにくいだろうから水面下では何人の被害者がいるのだろうか。ただ、状況証拠が限りなく黒に近いグレーを指しているとはいえ、殺人に関してはまだ被疑者にすぎないので、その感想はまたいずれかの機会として。

この34歳女のブログの内容が繰り返し紹介されている。ベンツはさておき、ブログの内容がほとんど高級食材、高級レストラン、スイーツ、パンで占められており、その食べっぷりを垣間見ると美味しそうというより胸やけがしそう。最初に紹介された下半分の巻髪写真を見ればトワコ嬢のような女性かと思ったが、連行中のシルエットやその他の写真を見ると、やはり相当のふっくらさんだ。ミシュランの記事を書いたばかりだが、美食家って本当に美食家なのねぇ、と変なところで感心する。私自身はそんなに胃が丈夫でないので、こんなにヘビーな食事を大量に食べられず、ある意味うらやましい気がしないでもない。人間の三大欲望は「食欲・性欲・睡眠欲」だと言われるが、彼女の場合、その1つが突出した感がする。今の私は睡眠欲が1番強い。

女はこの3年間で1億弱を手にしたと言われる。現在、口座の残金はほぼ0円らしい。CクラスベンツとEクラスベンツの購入代金(数千万?)とケリーバッグくらいを除けばさほど買い物三昧という様子は伝わってこない。ご自慢の巻髪もノーカラーだし、あんまり手をかけているようには見えない。ご近所の人の意見ではごく地味な40代女性に見えたそうだ。私が1億使いまくれと命じられたら、髪なら最低週1は美容院に通い、ネイルとエステを合間に入れ、最新モードを購入するだろうが、食べ物にはそんなに使えない。いや使ったら、せっかく美容にかけたお金が台無しになるのがもったいない。

ただ根がセコイもので(笑)、実際のところは多分美容のような消え物にはジャンジャン使う勇気がなく、貯金が駄目だと言われたら仕方ない、日頃は手に出せない家具や絵画や美術品が欲しいかも。あるいは土地かマンションを買う。もしくはその金を元手に投資に走りさらに増やす。使った分、増やしたいと考えるのは我が家に数代流れる商売人の血か。

彼女が食を中心とする贅への欲に身を滅ぼした(と仮定する)ならば、だまされた男性諸氏は何の欲望に足を取られたのか。何歳になっても衰えなかった三大欲望の性欲なのか。それとも人と人との間の温もりや触れ合いのようなものを求めたのか。それを最も求めてはならない相手に求めてしまったのは皮肉なものだ。オレオレ詐欺に多額の現金を振り込んだ老人の話を聞くような苦い気持ちだけが残る。

【2009/10/30 09:50 】 | 時事社会 | コメント(4) | トラックバック(0) |
「だまし絵展」−不思議の国のアリス
兵庫県立美術館で開催中の「わが目を疑え『だまし絵』」展に早起きして行ってきた。

今月中旬には入場者数20万人を突破したという盛況ぶりのため、平日の午前を狙ったのだが、結構な人出。やっぱり人気だ。芸術作品はちょっと苦手〜という人でも子供でも楽しめるところが受けているのだろうか。街でポスターを見て絶対に行こうと思っていたのに、ぼーっとしている間に閉幕の11月3日がもうそこまで近付いている。

だまし絵

トロンプ・ルイユ(Trompe-l'œil、騙し絵)とはシュルレアリスムにおいてよく用いられた手法・技法である。ただし、シュルレアリスムに限って用いられるものではない。フランス語で「眼を騙す」を意味し、トロンプイユと表記されることもある。今日では解りやすく「トリックアート」と呼ばれる事も多い。

1.壁面や床などに実際にはそこに存在しない扉や窓、人物、風景などを描き、あたかも存在するように見せかける作品
2.平面作品に物を貼り付けて、絵の一部が外に飛び出しているような作品
3.3次元の現実ではありえない建築物を描いた作品(例えば、エッシャーの作品)
4.人体や果物・野菜などを寄せ集めて人型に模した作品(例えば、アルチンボルドや歌川国芳の作品)。寄せ絵、はめ絵という
5.普通に見ると人間の顔に見えるがさかさまにしたり、向きを変えたりするとまったく別の物に見える作品(例えば、ルビンの壷)
6.大きさや長さについて錯覚を起こさせるような作品
(By Wikipedia)


だまし絵展のポスターに使用され、上の写メにも映っているアルチンボルドの最高傑作「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」は今回日本初のお目見えである。50種以上の果物・野菜・花が、作者の主君、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の肖像となっている。その他、だまし絵と言えばお馴染みのエッシャーも数点。歌川国芳らのユーモラスな浮世絵など日本の画家の作品も含めて、古今東西の「だまし絵」の代表作100点以上が一堂に会している。

じっと眺めていると、何だか一瞬アリスのような気持ちになるだまし絵。秋晴れの数時間の過ごし方にはお勧め。


ところで、美術館内のショップで素敵なイラストを見つけた。作者は白谷若菜さんだ。「InRed」の占いコーナーのイラストも担当しているらしい。兵庫県出身の彼女の描く女性たちは、何となく神戸の香りがする。ガーリーな色気がムンムン伝わってくる。部屋のイメージとちょっと合わないのでポスターの購入は控えたが、ご興味のある方は上記サイトを。だまし絵展開催期間中は美術館で様々なグッズの展示販売を行っている。



【2009/10/29 09:34 】 | つれづれ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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